森の再生 from アマゾン  
アマゾンには、たくさんの放牧跡地があります。ほんの30年前は密林だったところです。基本的には、産業造林についての内容ですが、産業造林によって木材が供給されれば、残っている天然林に対する圧力が減ります。
人工林の結果、天然林が守られることにつながるからです。
アマゾンの荒廃地(牧場跡地)の造林はどう進めるか。
このテーマにチャレンジしている日系企業の話です。


この企業は、日本嫌いの環境テロリスト(自称環境NGO)に色々難癖を付けられていますが、牧場跡地の植林というアマゾンの大きな問題に対し、非常に一生懸命取り組んでいます。他の企業も植林を始めていますが、ここほど徹底したところはないです。

口や筆で好き勝手書いたりしゃべることは簡単ですが、実行は非常に大変です。多くの環境NGOの実態は、口だけ。大阪で言う「風呂屋のおっさん」(湯だけ)です。
何年か経って、造林地を訪れてみたいものです。

そこでの、造林の取り組みを紹介します。

1.牧場跡地での造林への試み

1−1 育苗について
樹種によって育て方は様々であるが、最も多く用いられているパリカ(Schizolobium amazonicumとSchizolobium excelsum:マメ科)での注意点は、
(a)発芽処理:
種子表面に紙ヤスリまたはグラインダーで軽く傷をつける。面倒であれば、発芽率は少し落ちるが熱湯処理でも良い。これを一晩水に漬けて発芽床に播けば2〜5日で発芽する。
(b)山出し:
荒廃地に山出ししても、ある程度苗ポット用土から肥効が続くように堆肥を多くした用土をポットに入れておく。
(c)ポット:
ポットの大きさは、通常直径8〜10cm、深さ14〜17cmである。3ヶ月ぐらいで苗高25〜35pになり山出しとなる。
(d)スタンプ苗:
パリカは成長力が強く、スタンプ苗でも活着、生育する。スタンプ苗用には半年〜1年育てたもので、地上部を10〜15cm残したものを用いる。

1−2 地拵えについて
(a)刈り払い作業:
草と径5cm以下の灌木の生えている場合なら、トラクターで牽引するカッターが鉄輪から駆動される草刈り機を用いる。径が15cm以下の木が生えるところ なら、ブルドーザーの排土板で倒しつつ、ROLO-FACAと呼ばれる刃付きのロールを転がして、それらの小径樹や灌木類を裁断しておく。
(b)耕起:
荒廃した土地は、かなり土壌が固くなっている。望ましいのは、ブルドーザーの後方に1mぐらい地下に入る爪を用いて、地盤を砕くこと(心土破壊)である。 これにより不透水層を砕くことで土壌が蘇る。しかし、Igarape-Asu植林地では、ブルにゆとりがなく、円板プラウを数度にかけて、25〜30cm を耕起した。その後ディスクハローで、砕土して地均しを行った。
(c)火入れ方式:
一区画(5ha)で耕起前に、火入れした灌木の混じった草地があったが、これまでの所(4年間の比較で)、かえって火入れした方が生育ぶりが良いようである。ブレベス(マラジョー島)での焼畑跡地への植林でも、火入れ地拵え(不耕起)が優れている。

1−3 植え付け
(a)植え付け時期:
苗木の山出しは、雨期に入ってから行っている。雨期の初めに植えておいたほど、後から植えたものより、同じ条件なら生育はよい。パラゴミナスの合板企業Gurupo Concrenの植栽地(写真@)では、乾期の9〜11月に灌水を行いながら(写真Aのタンク車を使って)植え付けることによって良好な生育ぶりを得ている。(写真B)これは、根系の発達を促進させたことによると思われる。

写真@
パラゴミナス(ベレンより南東300km)パリカ一斉造林(500ha)右手の緑の濃い方は1年3、4ヶ月たったもの左手は乾期になって植えたもので8ヶ月しか経っていない。

写真A
6,000gの水タンク、3つのホースを取り付けている。乾期に植栽した場合、初めの1週間は毎日、その後は3日毎に灌水を行う。


写真B
乾期(9月)に植えたところで8ヶ月間でこれだけ伸びた。27年生の再生林を皆伐後、火入れ地拵えを行った。土壌条件は良好。施肥は@植え付け時100g/本のリン酸(superfosfo simples)、A雨期の始め(1月頃)NPK25:0:5 120g/本、B雨期初期(1〜2月)1本あたり600gの重リンを列間に播き、グレーダーをかけて土と混ぜる。
(b)植え付け間隔:
トラクターによる除草作業を効率的に行うには、4m×4mが良い。この場合、625本/haの密度となる。
(c)混植について:
牧場跡地での植林は、パラ州でユーカリやマツを除けば、ほとんどがこの4、5年前から、小規模に始められたにすぎない。大部分がパリカ(Schizolobium amazonicum)の純林を作ろうとしているようである。ポルテル郡ピアリン河で一次林を焼き払ったところに、19年前(1978年)2haぐらいのパリカのみの植林を行ったことがある。
このときの経験では、3、4年間は非常によい成長を見た後、成長が緩慢となり、インバウーバ(Cecropia spp.)やパラパラ(Jacaranda copaia)等のパイオニア樹種やツタ類、灌木類の旺盛な侵入を防げられず、失敗している。
しかし、その時、植林地内の通路に並木状に植栽したカリビアマツは今でも残って、直径40p以上となっている。カリビアマツの植林でも感じたことだが、ア マゾニア森林地帯は実に多様な植物が共存してしているところで、一つの樹種の純林を作り上げようとするには無理がある。そこで、Igarape-Asuの この植林地では、混植を試みている。組み合わせ方は、色々で未だどれが良いかは分かってはいない。

用いられる樹種は次のようなものである。
チーク(Tectona garndis:クマツズラ科:外来種)  
アルビヂア(Albizia falcataria:マメ科:外来種)
パウデバルサ(Ochroma sp.:パンヤ科)
スクルーバ(Trattinickia burseraefolia:カンラン科)
ビローラ(Virola surinamensis:ニクヅク科)
マホガニー(Swietenia macrophylla:センダン科)
パリェティラ(Clitoria fairchildiana:マメ科)
カスターニャ・ド・パラ(Bertholletia excelsa:サガリバナ科)
マルパ(Simarouba amara:ニガキ科)
ジャトバ(Hymenaea courbaril:マメ科)
イペー(Tabebuia serratifolia:ノウゼンカズラ科)
サマウマ(Ceiba pentandra:パンヤ科)
アンジローバ(Carapa guianensis:センダン科)
ファバ・アタナ(Parkia sp.:マメ科)


写真C
94年3月植林地3年経過 パリカとモギノ(マホガニー)の混植。Igarape-Asu植林地97年2月4日パリカは10m以上になったものが多い。モギノはHypsipyla grandellaの被害にあっている。
樹種の組み合わせとその将来の利用について、現在次のような案を練っている。来期(98年)に、Garrafao do Norte(ガラフォン・ド・ノルチ)郡の牧場跡地で試みる予定である。
◎パリカは突風によって頂部や枝が折れやすいので、林縁部と風上部分に風に強い樹種を選ぶ。
(今年はParkia sp.を植栽)
◎植栽間隔は4m×4m、625本/haで内訳は、@バルサ(Ochroma sp.)300本(4m×4m)、Aパリカ(Schizolobium sp.)と風に強く成長の早い他の樹種276本(カスターニャと組んで4m×8m)、Bカスターニャ(Bertholletia excelsa)49本(16m×16m)
◎それぞれの伐採時期と用途
@バルサは1本に20g位の堆肥を入れて成長を早め、5〜6年で伐採。ランバーコア合板とし、軽いものを求めている顧客へ提供できる。(50ha位?)
Aパリカ類は18年位で伐採、250/haぐらいの丸太収穫を期待している。ロータリーベニアとランバーコア材として利用する。
Bカスターニャは、9〜12年で実(パラ栗)の収穫が出来るようになる。25年で胸高直径55p、枝下高11mには育つ。材積で2m3/本、90m3/haの用材(合板、製材用)となろう。

1−4 施肥
(a)Igarape-Asuでは土壌酸性度は平均pH4.8であった。
石灰マグネシウムを1ton/ha入れている石灰を入れないと、植栽木に勢いがつかず、雑草に負けてしまう。
(b)遅効性のリン酸、(NPK=18:18:18)の化学肥料を使っている。他社ではこの肥料を300〜600kg/ha年間に使っている。当社の場 合、いろいろの量と方法をテストしてみたが、後で述べる混植方式をとると、年150kg/haでも十分と見ている。植栽時から2年又は3年間の化学肥料の 有効性は分かっているが、植林木が5m以上に育ってきてからの施肥効果、経済性を調べることは今後の課題であろう。なお、当地では降雨による肥料の流失が 大きいので少量づつ分けて施肥するようにする。
(c)有機質を施肥してやることは、量が多くなるので手間がかかる。しかし、その効果は大きい。一般に牧場地帯では牛糞が入手できる。Garrafaoの 場合、現場着でトラック一車(13〜15m3)US$350で買える。(1本あたり5gを使うと、4ha分に相当)Igarape-Asuでは近辺の油ヤ シ採油工場で捨ててあったCacho(へたの部分)を大きな固まりのまま木の根本においてみたところ、大きな効果が認められた。しかし、これを見た日系農 家の人たちが、それを自分のヤシ園に戻すようにしてしまったため、入手できなくなってしまった。当社では、大量の樹皮がでてくるので、一部でチッパーにか けて、豚舎(工場の食堂残飯利用)の糞尿と混ぜて、バーク堆肥を作っている。
トラック一台を植林地と工場間に常時往復させて、これを運ばせている。植林地からの帰りには、除草作業の邪魔になっている石を積ませ、工場内の道路補修や建設に役立てている。堆肥化していない生の樹皮でも、根本にマルチングすると大きな効果がある。(写真D)


写真D
チークの根元に最近マルチングした樹皮。植え付け後1年経ってもあまり成長していなかった。農作物も植えなかった。半年すると分解しマルチング効果の他に 施肥効果が持続する。泥炭を鶏糞と石灰を用いて発効させた、フミン酸の多い有機肥料(商品名ORGARIN US$150/ton)も化学肥料と混ぜて使 用してみたが、樹皮をそのまま入れてやるほどの効果は現れなかった。
1−5 雑草対策と混農方式の効果
(a)牧場跡地で造林に取り組んだものは、誰もが痩せ地用に導入されていた牧草に手を焼いている。乾期に牧草を焼き払って、天地返しして根まで枯らしてき れいにしたと思っても、雨期になれば以前に増して草の勢いが強くなる。牧場主は地力が無くなり牧草が退化して牛が飼えなくなったと嘆いているのが嘘のよう にすら感じる。特にキクユ(Quiquio amazonica or Brachiaria humidicola)というのが手強い。


(写真E)
混植密植実験地(宮脇方式)キクユのため、植栽木が行方不明になったところ。両脇と奥の方に見える木々は樹皮によるマルチングをしていたところで生育している。除草作業は何度も行っているが、草の勢いにかなわなかった。

(b)これに対抗するため、トラクターでの除草とCOROAMENTOといって
人力によって木の根まわり半径30〜50pをエンシャーダ(除草用の鍬)での除草を行う。
しかし人手がいくらあっても足りなくなり、その割に植栽木は伸びてくれないのでお手上げになる。
そのため、高価な除草剤に頼ることになる。
キクユにはRANDAP(US$58/g)という除草剤ぐらいしか効果はなく、
それを使っても欠株は多くなるし、生育が不揃いになる。


(写真F)
”FAZENDA PARICA”(三合板企業の連合植林地)除草剤による保育を行っている。
植栽後3年、欠株、生育のばらつきが目立ち、再度植え直さねばならない。
年2回散布しても、農薬代だけでUS$120/haかかる。

(c)Igarape-Asu植林地では、除草剤に頼らず、もっと効果のある方法を模索した。
初年度は施肥と除草(人力・機械力)でゆこうとしたが、植栽木は勢いがつかず、キクユに負け始めた。
二年目になって、米、トウモロコシ、マメ(フェジョン)を列間に植えていったところ、
草の勢いを押さえ、急激に植栽木の成長が始まった。 


(写真G)
列間(3メートル幅のところ)に米を栽培したところ。直播して4ヶ月目。化学肥料(NPK=18:18:18)は40kg/ha位を2回、米に施すように した。鳥がたくさん飛来し、3割位は食べられたようだ。米の後で、マメも植えたが、害虫の被害が全く見られなかったところを見ると、この鳥達が食べてくれ ているのかもしれない。

米は1〜4月に植え付けて4ヶ月間で収穫できる。しかし、2年生木で生育が良くなり、日陰が増えてくると実が付かなくなる。米の後ではフェジョン(マメ) を播きつける。フェジョンは種類が多い。南部ブラジルでよく植えられていて、市場性のあるものを雨期の続いている4、5月に播くと、ツタが発達して植栽木 にからみつきやすくなる。その時期には当地でよく植えられていてマメの皮が少し固いタイプのものがよい。フェジョンも4ヶ月で収穫できる。苗木植栽後2年 間、この混農方式をとると、木の生育が良くなり、キクユは日陰が出来るために勢いが衰えてゆく。穀類の収穫量は米で100〜150kg/ha、マメは 150〜200kg/ha(初年度)あるが、その値段は安く、人件費を払う程度である。しかし、除草剤を使うよりも安上がりの上に効果が確実である。米、 マメ、トウモロコシの他にマンジョカ(キャッサバ)を試している。この芋の場合8〜12ヶ月植えたままでいるので手間はかからない。芋の生育のために木の 根と競合するかと思われたが、これまでのところ全く問題なく、ライン間を裸地にしておくよりも良い結果が見られる。(写真H)

(写真H)
植栽木ライン間の下層に見えるのがマンジョカ約1年経過 97年2月4日

(写真I)
写真H上のところと同じ場所、9ヶ月前のもの 96年5月9日

1−6 防火対策
熱帯降雨林帯のアマゾナス地域でも、多くの地帯が明瞭な乾期の見られる熱帯雨林気候帯に属している。特に月間雨量が100mm以下となる3、4ヶ月は野 火、焼畑による延焼が恐ろしい。Igarape-Asu植林地でも、注意はしていたものの隣家の焼畑の火が入り、数ヘクタールの被害に遭っている。対策と しては、
(a)土地境界部にはなるべく広い(出来れば30m)防火帯を設け、乾期に耕耘除草を怠らない。
(b)区画を4、5haで分け、幅6〜10mの通路を置く。
(c)隣家、近辺の人たちの防火に対する説明を行い、協力を得る。友好関係に努め、特に子供達への教育が必要(火入れ時は事前に連絡させる。イタズラ火を入れさせない。)
(d)いざという時の早期発見、消火体制も植林地の規模に応じて作っておく。


ここでの、植林は、産業造林ですが、産業造林が進めば、天然林を切ることが減ります。
産業造林の強みは、均一的な性格の樹種が同時にたくさん取れるからです。
コスト的にも天然林から木を伐る必要が無くなります。
そして、僻地でも雇用の場が生まれます。
貧困対策としても、植林は有効な手段です。