ピサの攻防から

ピサの斜塔で有名なピサ。
かつては海洋国家として名を馳せ、その利益で作ったのが、ピサの斜塔を中心とした教会。ヴェネツィア共和国、ジェノバ共和国、アマルフィ共和国と並ぶ4大海運国の一つで、Maritime Republicsといわれるほどの国力を持っていたんです。

ローマと手を組み、ベネチアを対抗したピサが勢力を落とした理由に、海洋国家を維持できなくなった堆砂問題があります。もちろん、1284年8月6日のメローリアの海戦は有名ですが、現在、海から10kmも離れているのが、この堆砂の結果なんです。

      


フィレンチェからピサに鉄道で行くと、映る車窓には、丘陵地形をそのまま利用したオリーブにブドウ畑、牧草地等々。特に段々畑ということではなく、地形に合わせての利用。降水量がどれだけか分からないけれど、降ったら表土もともに下へと流れ、やがては川に達し、河口で堆積。浚渫をしなければ、河口にある港は大型船が入れずオジャン。

オリーブとブドウ畑

地表を覆う対策は為されていません。

この畑の下はピサに繋がる川です。
フィレンテェから流れ込むアルノ川です。
   
車窓から見る限りでは、下手くそな土地利用に見えてしまった。
そこに長年続く土地利用の知恵があるのかもしれないが、見た目には分からなかったです。かつてペリーが日本に開国を迫るために立ち寄った沖縄で、階段状の土地利用をみて驚嘆したと言われているが、土地利用方法ですごいと思わせる感じではなかった。

 
一方、ボローネからミラノにいく途中の車窓からは、防風林が畑を守る風景が続き、土壌が豊かに見えたのだが。

土地利用という観点からみれば、持続させるには、努力させる作物を植える必要があって、荒廃地でも痩せ地でも生存できる植物に頼るのは危険な気がします。

荒廃地でも育つ作物を導入することは、貧困対策の一歩だけど、次に土地生産性を高める方法に持ち込み、土壌流亡を押さえる土地づくりをしなければ、ピサの二の舞になりそう。歴史から学ばなければならないのはこういった興亡の歴史からなんだろう。

ただし、都市国家の集まりであったイタリア。川の上流部にあった都市国家に、港を守るために木を植えてくれ、階段上の畑にしてくれといっても、聞いてくれたのだろうか。敵であれば、港を物理的に使えなくする方が良いわけでから。

メソポタミア文明の終焉の理由の一つに運河の浚渫が出来なくなった話があります。日本でも各地で浚渫が行われています。それが船の航行を支え、私たちの生活を支えてくれているわけです。

では、土壌が流亡しない土地利用をしているのでしょうか。
もう一度、足下を見直す必要があるのかもしれません。



(上)フィレンティ→ミラノ間の山:人工林が見られます。
(下)フィレンティ→ミラノ間の平地:防風林が農地を守っています。


森と神様