焼畑悪玉論
焼畑について 一言

コスモ石油のCM(2002年11月頃)で焼畑が森林消失の原因というのがありました。
環境広告シリーズ「パプア・ニューギニア篇」
「生きるために森を焼く人たちに、森を守ろう、という言葉は届かない。」
というモノです。

焼畑は、熱帯で理にかなった農法(農業)なのです。本当は、自然に環境に優しい方法なんです。ウン千年もの人類の知恵の結晶なんです。数年後には焼畑は森に帰るんですから。焼畑で森林破壊は、一時的な現象なんですけどね。焼畑やめて水田で稲作農法を教える。これは森に帰りません。稲作を伝えること=森林破壊なんです。
あのCMについていえば、CMプランナーの無知(というより間違った知識のすり込み)から起きたことなのです(多分)。まぁ、森林に関する仕事をしている人の広報不足ともいえます。
まぁネタ的には、このCMにかみついた(異議を申し立てた)のが朝日新聞というのには、笑ってしまったんですけどね。(^ ^;

もし、人口増加で焼畑を続けるのが難しいのであれば、焼畑をやめさせることが解決ではないのです。焼畑をやめれば、森が消える事はないと思うかもしれませんが、それは表面だけを見た話なんです。一見良いことのように見えても、環境には良くないことをしているんです。その前に増える人口を何とかしないといけないんです。
もちろん、森を守るという意味でです。経済的に文化的にどうかはここでは触れませんが。
  その前 1年目 2年目 3年目 4年後 5年後 10年後 30年後 違い
焼畑なら 農耕 農耕 農耕 放棄
だんだん
藪に
灌木の
侵入
二次林
早生樹の林
鬱蒼とした森林 森になったり
農地になったり
繰り返し循環
水田なら 水田 水田 水田 水田 水田 水田
収量は?
化学肥料の投入
??
地力が落ちれば
放棄されることに
森には戻らない
地力が落ちれば
どうするんだろうか
焼畑は、一見すれば、森が焼かれるように思いますが、実は土壌や病害虫を火によって消毒しているんです。多様性に富む熱帯では、たくさんの生き物がいて、農業を行うのは大変なんです。あえて書きますが、焼畑は環境に適応した生きるための知恵なんです。稲作が根付けばいいですが、お金が今まで以上にかかるようになると思います。農薬や肥料など。
そして、焼畑をしては行けない場所(水源の確保や崩壊の防止)には精霊がいるといって、タブーにして立ち入りすら禁じるルールもあるんです。日本の神社の裏山に当たる鎮守の杜と同じ。きちんと自然を把握しているんです。無理なことはしません。
そして焼畑による森林を焼く行為は自然環境を攪拌するため、植生の遷移が起きるため、たくさんの動植物に活動の場を与えるのです。多様な生態系を焼畑は生み出すのです。生きとせ生きるモノには非常にプラスなんです。

政策として、焼畑をやめさせて常畑にするところがあります。NGOと呼ばれる人達が定住化させるために焼畑をやめさせるため、常畑を導入するようなことが行われています。しかし、数年後には地力が落ち、農業が出来ません。収穫が落ちるからです。すると化学肥料を投入します。しかし、数年後に土が死んでしまうと言われています。そうなったら、もう使うことの出来ない、不毛の土地になります。化学肥料を使う方も、信仰に近い感覚で必要以上に投与してしまいます。多く化学肥料を入れると収量が多くなると信じているからです。

焼畑は、本当に悪いことなんでしょうか。
怖いのはCMの意図(コスモ石油の社会貢献)ではなく、焼畑=環境破壊=悪という認識が広まることです。PNGの人達の御馳走は、お米とラーメンだそうです。お米が自分たちで作れるようになれれば、お金を出して外から買う必要はないので、良いのかもしれません。これは、社会貢献には間違いないと思いますが、勘違いが増えるのが怖いんです。割り箸が熱帯林破壊の元凶と嘘の報道
(嘘の報道したのがコスモ石油のCMに噛み付いたところです)がなされ、未だに幽霊がいるんですから。(割り箸の話はここ)

生活の中ではぐくまれた焼畑は、生活の中で息づいています。自然を観察する目を養ってきました。一見のほほんとしているようですが、草取りなどの作業もあり、種まきタイミングを常に見ているのです。木を見て、太り具合で地力の回復度を判断するんです。

私たち、日本人の風習にも焼畑の面影があります。お盆の送り火やイモ正月等々。文化でもあるんですよね。
ソバだって、あんこの小豆だって、漬け物の蕪や雑穀のヒエ、粟等々、もとは焼畑からの贈り物だったんです。お祝いに食する赤飯。もともと赤米だってそうなんです。陸稲と呼ばれるお米の仲間は水田ではないんです。焼畑からの恵みだったんです。ここに書いてみました。(焼畑とお盆のところ)

バナナ、タロイモ、トウモロコシ、サツマイモ、マメ等が植えられています。
パプア・ニューギニア、ニューブリテン島より

マレーシアのサバ州
生姜(換金作物)を植えています

ベリーズの焼畑(マメ、トウモロコシ)
5年後には二次林、地力が回復後、再度焼畑を行います
マヤ文明もこの焼畑による豆とトウモロコシに支えられていました。
 
フィンランドの焼畑(カブ)


くどいようですが、焼畑は森林破壊と呼んでほしくないんです。文化なんです。その地域の歴史なんです。ここで取り上げている焼畑は、いわゆる伝統的な焼畑です。その土地の人たちが、何世代にわたって行ってきた焼畑を取り上げています。フィンランドでは、誇りある焼畑を後世に伝えるために博物館まで作っています。

人口増加によって職のない都市部のあふれた人が、未開の森林に入って行う無知による焼畑ではありません。2種類の焼畑があるため、混同しないようにお願いします。

  農民 土地利用 森林へのダメージ
伝統的焼畑 何世代にわたる農民
親から子へ技術が伝承
自然観察力・農業知識を持つ
その地域(部族・村)の
慣習による土地がある
政府公認とは限らない
あまり無し
時間が解決
無理をしない
非伝統的焼畑 都市部からの流入
生きるためにとりあえず農業を行う
農業知識・自然観察力の欠如
慣習による土地は無し
勝手に土地を切り開く
大きい
限度を知らないため
地力が回復できない
まで酷使する

人口の増加で、休閑期間が短くなってきて地力が十分回復しないまま森を焼くことが始まっています。伝統的な焼畑が崩れているというのがあります。でも、日本や中国の雲南省の一部の民族では窒素固定をする木(ハンノキ)を焼畑後に植え、地力の回復期間を早めることをしています。困った時、人は次のことを考え、問題を解決するんです。


焼畑に関するWebサイトはこちら
焼畑、水田、プラント・オパール
http://www.coara.or.jp/~sasakiak/SA-JapHP.html
僕たちの尾向小学校(今でも教育の一環で焼畑を行っている宮崎県椎場村の学校)
http://cms.miyazaki-c.ed.jp/1691/

焼畑悪玉論
きこりのホームページ http://www.kikori.org